【解説】Matter や Thread とは?何がどう変わるの?【スマートホーム】

記事の最終更新日: 2023/10/24

みなさんこんにちは、たいくんです。
2022年10月4日に、スマートホームの新規格「Matter 1.0」が開始されました。
それにより、様々なメーカーやデバイスがMatterの対応を続々と開始していますが、Matterに興味を持った方の中には、Matterが何か、Matterに対応すると何が起きるのかなどを理解していない方も多いのではないでしょうか?
この記事では、Matterとは一体何か、Matterに対応すると何が起きるのか、Threadネットワークとは一体何か、Threadに対応すると何が起きるのかを、詳しく解説していきます。



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Matterとは?

スマートホームの新しい規格

Matterとは、無線通信規格標準化団体「Connectivity Standards Alliance」(CSA)が制定した、スマートホームの新規格です。

2023年10月時点で最新のMatter 1.2では、対応デバイス同士の接続に使用される通信には、イーサネット、Wi-Fi、Thread、Bluetooth Low Energy(BLE)があります。

そして、動作には主に、Wi-Fi(Matter over Wi-Fi)とThread(Matter over Thread)のネットワークが使用されます。
BLEは、接続するデバイス同士の検証に使用されます。
イーサネットは、Wi-FiかThread(または両方の)ネットワークで構築されたMatter対応のスマートデバイスにアクセスするための1つの経路として使用されます。

Threadについての詳細は後述の「Threadとは?」をご覧ください。

多くの企業が参加している

記事執筆時点でのMatterに参加している企業の数は270社以上です。
その中にはAmazon、Apple、Googleなど、主要なプラットフォームを提供している企業も参加しています。

そして、すでにAmazonAppleGoogleなどはMatter(Matter対応デバイスを制御するためのMatterコントローラー機能)に対応しています。

そのため、かなり期待できる規格だと言えそうです。



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Matterコントローラーについて

Matter対応デバイスを制御するためには、ハブとなるMatterコントローラーが必要です。
こう聞くと、わざわざコントローラーを用意するのは大変だと思うかもしれませんが、実は身近な製品がMatterコントローラーとして機能します。

例えば、2023年5月時点でのAmazon、Apple、Google製品では、以下のデバイスがMatterコントローラーとして機能します。

* ホームハブとして設定した場合に利用できます。

** Appleの新しいホームアーキテクチャにアップグレードした場合は利用できなくなります。


スマートホームに興味がある人であれば、これらの製品を1つ以上持っている方も少なくないと思います。

また、これらの製品を持っていない方でも、お使いのスマートフォンやタブレットに、Matterコントローラー機能が内蔵されたアプリケーション(Appleの「ホーム」やGoogleの「Google Home」など)をインストールすることでも、Matter対応デバイスを制御することができるようになります。
ただし、外出先などの異なるネットワークから制御したり、オートメーション(スマートデバイスの自動制御)を確実に実行したりすることができない場合があります。そのため、(Matter対応デバイスの安定動作のためにも)1つ以上はMatterコントローラーとなるスマートデバイス(上記など)を用意しておくべきでしょう。
アプリケーションはあくまで「Matter対応デバイスを制御するだけのもの」であり、「ハブではない」ため、注意が必要です。

他にも、利用するプラットフォームごとに、そのプラットフォーム用のMatterコントローラーが必要になります(例えば、Apple HomeKitの場合はHomePodやApple TVなどのホームハブが必要)。

なお、Wi-Fiネットワークではなく、Threadネットワークを利用するMatter対応デバイスを制御する場合は、Threadボーダールーター機能を内蔵するデバイスが必要になります。
詳しくは後述の「Threadとは?」をご覧ください。



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以前までの不便が解消される

以前は、Amazon Alexa、Apple HomeKit、Google Homeなど、様々なメーカーが様々なプラットフォームを提供してきましたが、それゆえに「特定の製品が特定のプラットフォーム上でしか動作しない」といったことが起こっていました。
例えば、カーテン開閉デバイスの「SwitchBot カーテン」(と、SwitchBot ハブミニなどの旧型ハブを使った場合)は、Amazon AlexaやGoogle Homeなどでは機能するものの、Apple HomeKitには対応していないため、機能しないといった現象です。

プラットフォームがたくさんあるという事は、製品を作るメーカーがたくさんのプラットフォームに対応させる必要があり、また、利用するユーザーは自分が使いたいプラットフォームに対応している製品のものを購入する必要があるため、メーカーにとっても、ユーザーにとっても不便でした。

しかし、Matterの登場により、これらの常識が一変します。



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Matterでどう変わる?

あらゆるプラットフォームに対応する

以前まではスマートデバイスを購入する際、自分の使いたいプラットフォーム(例えばApple HomeKitなど)に対応しているかどうかを確認する必要がありました。

しかし、現在では多くのプラットフォームがMatter対応デバイスの制御に対応しています。
逆に言えば、Matterに対応しているという事は、多くのプラットフォームにも対応しているということになります。

そのため、これからの時代はスマートデバイスを購入する際、「Matterに対応しているか」を確認するだけで良くなります。

他にも、メーカーは、様々な企業が提供する独自規格ひとつひとつに対応する必要がなく、「Matter」という1つの規格に対応さえすれば、様々なプラットフォームで動作させることができるようになります。

先程の例で言えば、カーテン開閉デバイスの「SwitchBot カーテン」に、Matter対応のハブである「SwitchBot ハブ2」を組み合わせることで、Matter対応のプラットフォーム(以前は利用できなかったApple HomeKitなど)に登録して制御することができるようになります。

Matterという規格は、製品を作るメーカーや製品を利用するユーザーにとって、負担が減るものになっています。

様々なプラットフォームで同時に利用できる

Matterの登場以前は、一部の製品以外は1つのプラットフォームでしか動作させることができませんでした。

例えば、スマートライトである「Nanoleaf Essentials」(Matterに対応する前のもの)は、Apple HomeKitやGoogle Homeなどに対応していますが、Apple HomeKitでセットアップした後はApple HomeKitに紐付くため、Google Homeなどの他のプラットフォームに登録することができなくなります。
Apple HomeKit以外で利用したい場合は、Apple HomeKitからペアリングを解除し、利用したいプラットフォームでセットアップを行う必要があります。
もちろん、Apple HomeKitからペアリングを解除したため、Apple HomeKitで制御することができなくなりました。

このように、(Philips Hueなどの)一部の製品を除き、多くの製品は複数のプラットフォーム上で同時に製品を制御する事は出来ませんでした。

それが、Matterに対応していれば、Matterに対応したすべてのプラットフォームに同時に登録することができ、もちろん、同時に利用することもできます(要するに、1つのデバイスを複数のプラットフォームで共有できるということ)。

また、複数のプラットフォーム間でMatter対応デバイスの状態は共有されているため、例えばApple Homeアプリで電球をオフにすると、他に登録しているプラットフォームでも電球がオフになったと表示されます。
もちろん逆に、Google Homeアプリで電球をオンにすると、他に登録しているプラットフォームでも電球がオンになったと表示されるのです。



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スマートスピーカーのメーカーを縛られなくなる

しかし、スマートホームを構築してきたユーザーの中には、このメリットがいまいち理解できないという方もいるかもしれません。
確かに、以前は1つのプラットフォームに集中して利用する必要があったため、他のプラットフォームと同時に利用することがないと考えている方もいると思います。

複数のプラットフォームで同時に利用できることのメリットとしては、「スマートスピーカーのメーカーを選ばない」ことだと思います。

例えば、以前まではApple HomeKitでスマートホームを構築してきたため、スマートスピーカーにApple HomePodシリーズを利用していたとします。
しかし、Apple HomePodシリーズは他のスマートスピーカーと比べて品質が高い分、価格も高くなってしまい、Apple HomePodシリーズを家中にたくさん置くことが出来ませんでした。
そのため、音声でスマートデバイスを制御する際、Apple HomePodシリーズが近くにある部屋でないと音声で制御することができません。

これがMatterに対応した今であれば、それぞれのプラットフォームに登録する手間が増えるものの、一度登録してしまえば、Matter対応のスマートスピーカーを様々な部屋に設置し、様々なスマートスピーカーを利用してスマートデバイスを制御することができるようになります。

つまり、リビングにはApple HomePodシリーズを、廊下にはAmazon Alexa搭載デバイスを、自室にはGoogle Assistant搭載デバイスを設置して、それぞれのスマートスピーカーで1つのスマートデバイスを制御する、といったことが可能になります。
例えば、リビングにあるApple HomePodシリーズや、廊下にあるAmazon Alexa搭載デバイス、自室にあるGoogle Assistant搭載デバイスのどれからでも廊下の電気を制御することができる、というわけです。

当たり前ではありますが、注意すべきなのはスマートスピーカーがMatterに対応したからといって、Matterではない既存のスマートデバイスが他のプラットフォームに登録できるようになるわけではありません(要するに「Apple HomeKit」などの既存の規格は既存のまま)。
スマートスピーカー側もスマートデバイス側も、Matterに対応している必要があります。

また、スマートスピーカーはあくまで「Matterコントローラー」です。つまり、制御する側であり、制御される側ではないため、プラットフォームの異なるスマートスピーカーを制御することはできません(例えば、Apple HomeKitでGoogle Nest Audioは制御できない)。

スマートデバイスをローカルで制御できる

Matterに対応したデバイスは、ローカルネットワークから制御されます(一部のデバイスはメーカーからの独自機能を提供するため、クラウドに常時接続されるデバイスもありますが、基本的な制御はローカルから行えます)。
そのため、高速なレスポンスと、動作の安定性、セキュリティやプライバシーが高まります。

また、スマートデバイスの製造元が提供するクラウドサービスがダウンしたり、サービス終了などにより提供されなくなったりした場合でも、スマートデバイスが制御できなくなることがなく、壊れるまで使い続けることができます。

従来のスマートホームと組み合わせられる

Matterは、従来のスマートホームとシームレスに統合するため、今まで頑張って構築してきたスマートホームを置き換える必要はありません。
今までのスマートホームにMatter対応のデバイスを追加し、両方を利用することができるのです。


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従来のスマートデバイスをMatter対応にアップグレードできる可能性がある

従来のスマートデバイスに、Matter対応のハブなどを追加したり、ソフトウェアアップデートをインストールしたりすることによって、Matter対応にアップグレードできる可能性があります。

例えばSwitchBotの場合は、SwitchBotの新しいハブである「SwitchBot ハブ2」を購入してシステムに追加すると、SwitchBot製品が(全てではありませんが)Matter対応にアップグレードできます。

IKEAの場合は、IKEAの新しいハブである「DIRIGERA/ディリフィエラ スマート製品用ハブ」を購入してシステムに追加すると、IKEAのスマート製品がMatter対応にアップグレードできます。

Bluetooth接続の製品のみを持っている場合は、Philips Hue ブリッジを導入し、ソフトウェアアップデートを適用することで、Philips Hue ブリッジに登録されたほぼすべてのデバイスがMatter対応にアップグレードできます。

このように、既存のスマートデバイスを買い替えなくてもMatter対応にアップグレードできる可能性が残されていて、上記で説明したような恩恵を受けられる場合があります。

なぜこのようなことができるのかというと、実はMatterは新しい通信技術を使ったものではありません。
既存の通信技術を用いて、様々なメーカーやプラットフォーム上で相互運用できるように開発された規格なのです。
そのため、Matterで利用するために必要なチップなどが搭載された既存のデバイスの場合、(メーカーの裁量や、搭載されているハードウェア次第ではありますが)ソフトウェアアップデートによってMatterを利用することができる場合があるのです。
必要なチップなどが搭載されていない既存のデバイスの場合は、必要なチップなどを搭載したハブがメーカーから発売された場合、それを追加することでMatterを利用する事できます。

注意: プラットフォーム独自機能が利用できなくなる可能性がある

Matterは、様々なプラットフォーム上で動作するように互換性重視で設計されています。
そのため、現時点では残念ながらプラットフォームが独自に提供する機能が利用できなくなる可能性があります。

例えば、Apple HomeKitの場合、照明デバイスでは「適応型照明」という機能があります。
これは、1日を通して照明の色を自動で調整する機能です。午前中の明るい時間帯には集中力を高めるとされている(色温度の高い)青白い光に、夕方から夜にかけて温かみのある(色温度の低い)オレンジ色に変わっていきます。

この機能はApple HomeKitに対応し、なおかつ適応型照明機能に対応した照明デバイスである必要があります。
Matterの場合、適応型照明に対応していない照明デバイスと同じく、Apple HomeKitに「一般的な照明デバイスとして認識させる」だけであり、「適応型照明機能に対応した照明デバイスとして認識させる」わけではないため、高度な制御には対応していません。

実際に試した方も、適応型照明機能が利用できない照明デバイスとして認識されると報告しています。
さらにスマート照明のPhilips HueをMatter対応とすることで、一つのデメリットも見えてきました。Philips HueをHomeKit対応デバイスとして使っていた時にはHomeKitの固有機能である適応型照明が使えていました。

しかしMatter対応デバイスとしてホームアプリに登録すると、この機能が使えません。このような例は他のスマートホーム関連製品でも起こり得そうです。Matterは最低限の互換性を確保することを優先して、こうした機能は省略されているのかもしれません。

Philips HueをMatterデバイスとしてホームアプリに登録するデメリット - ふーてんのiPad

それ以外にも、「HomeKit セキュアビデオ」という、一部のHomeKit認証されたセキュリティカメラやドアベルに搭載されたカメラで利用できる機能があります。
これは、収録された映像をホームハブが解析し、人物や動物、車などを認識し、録画できるようになる機能です。

現在のMatterではセキュリティカメラに対応していませんが、今後対応したとしても、この機能は利用できない可能性が高いです。

このように、プラットフォームが独自に提供する機能が利用できない可能性があるため、そこは注意する必要があります。

なお、製品がMatter対応のものや、Matter対応にアップグレードされた製品であっても、(Philips Hue デバイスのように)Matterに加えて使いたいプラットフォームに個別に対応している場合は、「Matter製品として」ではなく、「そのプラットフォーム対応の製品として」登録することで、そのプラットフォームが独自に提供する機能を利用することができます。
そのため、これらの制限は、プラットフォーム登録時に注意する必要があります。


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Threadとは?

スマートデバイス向けのメッシュネットワーク

Matterを語るにあたって欠かせないのが「Thread」です。
Threadネットワークとは、スマートデバイス(IoT)向けに作られたもので、Threadボーダールーターとそれに接続するデバイスからなるメッシュネットワーク技術です。
メッシュ、つまり、網目のように接続されることから「メッシュネットワーク」と呼ばれます。

Matterを利用するには、Wi-Fiネットワークを利用する方法と、Threadネットワークを利用する方法があります(2つを同時に利用することも可能)。
必ずしもThreadネットワークを利用しなければならないという事はありませんが、Threadネットワークを利用するメリットはたくさんある(そして、身近なデバイスがThreadに対応している)ため、Threadネットワークの概念を多少なりとも理解しておくべきだと思います。

今までのスマートデバイスとは違い、Matterの登場によって、Wi-FiやBluetoothだけでなく、Threadネットワークが利用できるデバイスが一気に増えると思われます。

Threadデバイスの種類

Threadに対応したデバイスには、大きく3つに分けられます。
  • Threadボーダールーター(Thread Border Router。「Thread境界ルーター」などとも呼ばれる)
  • ルーター(Router)*
  • エンドデバイス(End Device)
Threadボーダルーターとは、Threadネットワークとそうでないネットワーク(Wi-Fiやイーサネット、クラウド)をつなぐデバイスです。
Threadネットワークにアクセスするために1つ以上必要です。複数のボーダールーターを設置することで、Threadネットワークにアクセスするための安定性が向上します。

ルーターは、別のThread対応デバイスにパケットを転送する仲介機能や、Threadネットワークを拡張する機能を持つデバイスです。
他のルーターやエンドデバイスと接続する中継器としての役割を果たします。また、複数のルーターを設置することで、複数の通信経路が確保され、Threadネットワーク内の安定性が向上します。

エンドデバイスは、上記機能は持たず、Threadネットワークに参加する機能のみを持つデバイスです。
上記デバイスとは異なり、エンドデバイスは1つのルーター(またはボーダールーター)とのみ接続します。エンドデバイス同士が接続する事はありません。他のThread対応デバイスにパケットを転送しないため、低電力で動作させることが可能です。
ルーター1台あたりにつき、511台までのエンドデバイスが上限となります。

ルーターとエンドデバイスは、親子関係です。
ルーターが親となり、エンドデバイスが子となります。


基本的には、これらの3つを理解しておけば問題ないでしょう。


* この記事では、ThreadルーターとWi-Fiルーターを区別するため、Threadルーターのことを「ルーター」、Wi-Fiルーターのことを「Wi-Fiルーター」と記述しています。なお、Threadネットワーク以外のネットワークを、わかりやすいようにWi-Fiネットワークで紹介していますが、イーサネットを使った有線での接続も可能です(ボーダールーターが接続されているローカルネットワークと同一のネットワークに限る)。

エンドデバイスの種類

エンドデバイスの中には、エンドデバイスだけではなくルーターとしても機能するものがあります(先ほど紹介した「Nanoleaf Essentialsはこれにあたります)。
これを「ルーター適格エンドデバイス(Router Eligible End Device。以下「REED」)」といいます。

REEDがエンドデバイスとして機能している時、新しいエンドデバイスを接続する際にこのREEDを経由する必要がある場合はルーターとして機能しますが、他のルーターを経由するなどして、このREEDを通して接続するエンドデバイスが1つもなくなった場合は、このREEDがエンドデバイスとして機能します(ただし、Threadの仕様としてREEDがエンドデバイスとして機能している時、Threadネットワーク内のルーターの数が16未満である場合は、このREEDがルーターとして機能します。また、Threadネットワーク内のルーターの数が24台以上になると、自動的にエンドデバイスとして機能するように調整されます)。

REEDの場合は、このようにして自身をルーターにアップグレードしたり、エンドデバイスにダウングレードしたりすることができます。

逆に、ルーターとして機能させることができない純粋なエンドデバイスのことを「フルエンドデバイス(Full End Device。FED)」といいます。

Thread対応デバイスには他にも様々な種類があるため、興味のある方は、GoogleによるThreadのオープンソース実装である「OpenThread」のガイドをご覧ください(機械翻訳のため、少しわかりにくい部分があります。その場合は英語でご覧ください)。



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Threadボーダールーターについて

Threadネットワークは、Wi-Fiネットワークなどとは異なる独自のネットワークです。そのため、Threadネットワークを構築し、アクセスするためにはThreadボーダールーターが1つ以上必要になります(ルーターのみだとThreadネットワークにアクセスできません)。

記事執筆時点において、Threadボーダールーターとして機能するデバイスは以下のようなものがあります。
ここで挙げたものは一例に過ぎず、今後さらなる対応デバイスが増えていくことでしょう。
Thread認証デバイス(ボーダールーターに限らない)はこちらの公式サイトをご覧ください。

先ほど説明したようにThreadネットワークは独自のネットワークのため、ボーダールーターがWi-Fiネットワークの通信圏内にあれば、接続するデバイスがWi-Fiネットワーク圏外でも(ボーダールーターと通信可能なルーターが近くにある限り)、利用することができます。

ちなみに、異なるメーカーのボーダールーターを様々なプラットフォームで共有することができる場合が多いです(例えば、Appleの場合は他社製ボーダールーターにも対応)。
そのため、基本的には利用するプラットフォームごとにボーダルーターを用意する必要はないと考えて問題ありません。

また、異なるメーカーのボーダールーターやルーターを使って既存のThreadネットワークを拡張したり、強化したりできます。
Amazonの場合は「Threadネットワークの認証情報を共有する」と正式に発表しているため、AmazonのThreadボーダールーター・ルーターの場合は既存のThreadネットワークを拡張・強化できることがわかります。
Googleの場合も、こちらの記事で既存のThreadネットワークを拡張することができると記載されています。

通信経路の例

Threadネットワークの通信経路の例はこんな感じです。
ルーターやエンドデバイスの数に応じて経路は動的に変わりますが、エンドデバイスに到達するにはルーター(またはボーダールーター)を経由する必要があることがわかると思います。

この例の場合、エンドデバイス1にアクセスするためには、以下の経路でアクセスされます。
  1. ボーダールーター
  2. ルーター1
  3. エンドデバイス1

エンドデバイス2または3にアクセスするためには、以下の経路でアクセスされます。
  1. ボーダールーター
  2. ルーター1
  3. ルーター2
  4. エンドデバイス2または3

動作中のルーターがダウンした場合はこのように、残りの動作しているルーターを経由するように、即座に通信が切り替えられます。
この例の場合は、動作しているルーターが「ルーター2」のみのため、すべてのエンドデバイスにアクセスする際にルーター2が経由されます(ボーダールーターが経由される場合もある)。

Threadネットワークはこのように、安定した通信ができるように設計されているのが特徴です。



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Threadでどう変わる?

Wi-FiやBluetoothの届かない所にも設置できる

この画像は通信可能な距離を視覚的に表したものです。実際の通信経路を表しているわけではないためご注意ください。
以前までのWi-FiやBluetoothを使用するスマートデバイスの場合、Wi-FiやBluetoothの電波が届かない所(玄関先や庭、2階や3階の端など)にはスマートデバイスを設置できなかったため設置自由度が低いのが問題でした。

Wi-FiやBluetoothの場合は、スマートデバイスと接続先(Wi-Fiルーターやスマートフォンなど)の距離が制限されるため、遠くまで接続する場合はより強力なWi-Fiルーターに置き換えるか、途中に中継器となるアクセスポイントを設置する必要があります。
Bluetoothの場合は中継器があまり一般的ではないため、基本的にはスマートデバイスと接続先のBluetooth通信圏内に限定されます。

それがThreadでは、それぞれのデバイスが通信できる距離かつボーダールーターがWi-Fiに接続できる距離であれば、Wi-FiやBluetoothなどの電波強度に左右されずに自由な場所にデバイスを設置することができるようになります。
つまり、ルーター同士がお互いに通信可能な距離であれば、理論上は無限に通信可能な距離を伸ばすことができます。

遠く離れた場所にあるデバイスが直接ボーダルーターにアクセスできなくても、その中間地点にあるルーターを通じてボーダルーターと通信を行うため、遠くにあるデバイスでも問題なく通信が行えるのです。

対応デバイスの安定性(冗長性)が増加する

スマートデバイスと接続先の距離が離れていると、接続はできていても通信が不安定になり、操作に遅延が発生したり、時々応答しなくなってしまったりする事態が起こってしまいます。

ところがThreadネットワークでは、メッシュネットワーク技術を用いて、Thread対応デバイス(ルーター)がお互いに通信を行うため、複数の通信経路が確保されます。それにより、離れた場所にあるThread対応デバイス(ルーターとエンドデバイス)への通信安定性が向上します。

また、Threadネットワークには単一障害点がないように設計されています。
単一障害点とは、ある1つの場所に障害が発生するとシステム全体が動作しなくなってしまう場所のことをいいます。

例えば、以前までのWi-Fiを利用するスマートデバイスの場合、接続先のWi-Fiルーターが1つしか設置されていない(冗長化されていない)場合、すべてのスマートデバイスが1つのWi-Fiルーターに集中して接続しているため、そのWi-Fiルーターが故障してしまうと、そのWi-Fiルーターに接続していたすべてのスマートデバイスにアクセスすることができなくなります。この場合はWi-Fiルーターが単一障害点となり得ます。

しかし、Threadの場合は多くの製品がボーダールーターとして動作するため、複数のボーダールーターまたはルーターを設置しておけば、いくつかのデバイスがダウンしたとしても、残りのデバイスで(ダウンしたデバイスを除いた)全てのスマートデバイスを接続状態にしておくことができます。この場合はThreadネットワーク内に単一障害点が存在しないことになります(1つのボーダールーター設置していない場合は、これが単一障害点になり得るため注意)。

Threadでは、ボーダールーターの数を増やすことで簡単に冗長性を高めることができるのが特徴です。

対応デバイスの速度が向上する

Threadネットワークは非常に高速です。
従来のスマートデバイスでは制御に時間がかかったり、応答なしになってしまうことがよくありましたが、Threadネットワークは安定していて、高速に動作します。

そのため、今までのような低速なスマートデバイスにイライラすることがなくなります。

対応デバイスのセキュリティが高まる

Threadネットワークは非常に高度なセキュリティで保護されています。
そのため、Threadネットワークに接続されているデバイスは高いセキュリティレベルを保有しています。

また、Threadネットワークに参加する時も認証されたデバイスのみが参加でき、ネットワーク内のすべての通信が暗号化されているため、安全性が高いと言えます。



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MatterとThreadでスマートホームを構築する方法

必要なもの

MatterとThreadを使ったスマートホームを構築するためには、以下のデバイスが必要になります。
  • Matterコントローラー(使いたいプラットフォームに対応したもの。1つ以上)
  • (Threadを利用する場合)Threadボーダールーター(1つ以上、安定性を高める場合は2つ以上)
  • Matter対応スマートデバイス(好きなだけ)
最低限これらのデバイスがあればMatterとThreadでスマートホームが構築できます。

構築の例

このような構成の場合、MatterコントローラーとなるホームハブがHomePod miniになります。
ThreadボーダールーターはHomePod miniとNanoleaf Linesで合わせて3台になります。

本来SwitchBot製品はApple HomeKitで制御することができませんが、SwitchBot ハブ2を使って、Matter経由でApple HomeKitからの制御を実現しています。

また、この構成の場合ではNanoleaf LinesやNanoleaf Essentials BulbsはMatterに対応していませんが、Matter対応デバイスと組み合わせて使うことができます。

やっておくと便利なこと

使うプラットフォームは1つだけでも問題なく利用できますが、複数のプラットフォームにも同時に登録しておくと、他のメーカーのスマートスピーカーが利用できるなど、便利なことが増えます。

スマートデバイスの数が増えてくると一度に登録するのは大変になってくるため、他のプラットフォームを使う予定があまりなくても初めのうちにやっておくことをおすすめします。



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これからのMatterに期待すること

対応デバイスの増加

Matterの登場からあまり時間が経っていないため、Matterに対応したデバイスがまだまだ少ないのが現状です。

そのため、今はまだMatterでスマートホームを構築する良い時期ではないかもしれません。
しかし、私はこれからMatterがどんどん広がっていき、「スマートホームといえばMatter」というレベルまで成長すると信じています。
今後、Matter対応のデバイスがどれだけ増えるか、とても楽しみです。

対応機種がまだまだ少ないからといってスマートホームの構築を後回しにするのではなく、今からゆっくりと揃えていけば、Matterが主流になった頃にさらに便利な世界が広がっていくと思います。

対応デバイスの種類の増加

実は、Matter 1.0 / 1.1では対応したデバイスの種類が少ないのです。
Matter 1.2で対応機種が増えたものの、現時点ではかなり期待していたセキュリティカメラにはまだ対応していません。

Matter 1.0 / 1.1で対応しているデバイスの種類は以下の通りです。
  • ブリッジ(ZigbeeやZ-Waveなどを使用するデバイスをMatterに取り込むためのもの)
  • Matterコントローラー
  • ドアの鍵
  • 空調コントロール(サーモスタットやエアコンなど)
  • 照明(電球やテープライトなど)と電源(スマートプラグなど)
  • メディアデバイス(テレビやオーディオなど)
  • 安全・セキュリティセンサー(防犯アラームなど)
  • 窓周辺とシェード(ブラインドなど)

Matter 1.2で新たに対応したデバイスの種類は以下の通りです。
  • 冷蔵庫
  • ルームエアコン(以前までの空調コントロールに加え、風量変更等ができるように)
  • 食洗機
  • 洗濯機
  • ロボット掃除機
  • 煙・一酸化炭素警報器
  • 空気質センサー
  • 空気清浄機
  • ファン(扇風機や換気扇など)

すでに、カメラ、家電製品、ロボット掃除機、電気自動車の充電、エネルギー管理(ソーラー発電や電気使用量の管理)などをサポートするための定義を始めているそうなので、今後のMatterに期待です。

Threadの普及

実は、Matterの登場以前にもThread対応デバイスは存在していましたが、あまり一般的ではありませんでした。どの製品が対応しているのか、どうすれば使えるのかが広く知られておらず、そもそも「Thread」というものを聞いたことがなかったという人も多いと思います。
しかし、Matterの登場によりThreadが一般的になり、Thread対応のデバイスが普及していくことでしょう。

Threadでは、接続されているデバイスの数が増えれば増えるほど安定する*という面白い特性のため、様々なデバイスがThreadに対応し、普及することを期待しています。


* 1つのThreadネットワークに接続できるデバイスの種類には上限があります(最大32個のルーターが接続できるため、最大16352台のエンドデバイスが上限となります)。

プラットフォーム独自機能が利用できるように

上記「注意: プラットホーム独自機能が利用できなくなる可能性がある」で説明したように、Matterではプラットフォームが独自に提供する機能が利用できない可能性があります。

これに関してはMatterに期待することというより、プラットフォームを提供している企業側に期待することかもしれません。

特に上記の例で言えば、Apple HomeKitの適応型照明はAppleが独自に認証した照明デバイスのみ対応しているため、この機能を他の照明デバイスにも解放しなければ、Matter経由で登録した照明デバイスではこのような機能を利用することができません。

そのため、規格側ではなく、プラットフォーム側に対応してもらうしかない(または、Matterに加えてそのプラットフォームにも対応している必要がある)のが現状です。



まだまだ課題はありますが、現時点でとても便利な規格になっているので、今後にとても期待です!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!それではまた!


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コメント

  1. とても分かりやすくまとめられていてわかりやすかった

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